橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「木こり」

classingkenji2012-03-30

経堂まで戻り、もう一軒。この店、ふだんは東京農大生のたまり場のようなところがあり、敬遠しがちなのだが、春休みの今日はひっそりしている。実は日本酒の穴場である。東京農大醸造科学科には全国から蔵元の後継者たちが集まっている。この店の常連となった後継者達が、卒業して実家に帰ったあと、自慢の酒を送ってきてくれるからである。
今日いただいたのは、愛媛の「石鎚」、雄町純米槽搾り。メニューに七〇〇円とあるので、てっきり一合かと思ったら、ガラスの徳利に二合近く入ってきたのには驚いた。最後に日本酒を軽く一杯くらいに思っていたのだが、腰を落ち着けて飲むことにする。ちょうど、石原裕次郎の「栄光への五〇〇〇キロ」をテレビでやっていたので、最後まで見た。この映画も、「黒部の太陽」と同じく石原裕次郎の意思でソフト化されなかったという作品。黒部の太陽の土木技術者より、こちらの方がはまり役のようだ。(2012.3.16)

世田谷区経堂2-19-1