橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

酒の肴

ハギス

アイラ島からグラスゴー経由でエジンバラへ。エジンバラ国際フェスティバルでコンサートを聴くのが主目的だが、もちろんパブめぐりも忘れるはずはない。 スコットランドのパブ料理といえば、有名なのはハギス。これは、羊の内臓のミンチをオートミール、タマ…

街角のココレッチ

お昼ごろイスタンブールの街角を歩いていて、店頭でココレッチを焼いている店を見つけた。羊の腸を棒にぐるぐると巻きつけて焼いている。どこかで読んだ話では、棒には別の内臓が刺さっていて、このまわりに腸を巻き付けるのだとか。昼食は、これをパンには…

トルコ料理の魅力

トルコ料理の代表格といえば、まずはシシ・ケバブ、ドゥネル・ケバブなど、肉を焼いた料理だろう。しかし、これと並んであげたいのは、野菜を使った前菜である。たとえば、焼きナスをヨーグルトと和えたナスのサラダ、トマトやキュウリなどの野菜を細かく刻…

カン風トリップ

城アラキの名作マンガ「ソムリエ」にこんなストーリーがある。世界的な名指揮者ペール・ブレイズが、主人公・佐竹城の店へやってくる。最高級の料理とワインを出さなければと意気込む支配人をよそに、城はふだん飲みのヴァン・ド・ターブルと、大衆的なビス…

フィレンツェの食品市場

フィレンツェ市街のあちこちには、革製品や衣類をうる露店が並んでいるが、いちばん露店の集中するあたりに大きな食品市場の建物がある。地味な建物で、はじめは倉庫か駐車場だと思っていたが、肉屋、八百屋、酒屋、加工食品店などが並んでいる。とくに目立…

フィレンツェ風トリッパ

トリッパは私の大好物のひとつだが、これがフィレンツェの名物だとは知らなかった。2つの店で食べたが、共通するのは、トマトを使ってはいるもののこれが前面に出ず、基本的には淡泊な料理であること、そして徹底した下ごしらえで真っ白に近いくらいに色が美…

仔牛のハツのクリーム煮

近くのスーパーで、仔牛のハツを買ってきた。300グラムで2.5ユーロくらい。どう料理しようかと考えたが、まず作ったのが、このクリーム煮。といっても、ほとんど手間をかけていない。ハツとタマネギ、ニンニクをバターで炒め、スープストックとローリエで煮…

仔牛のカシラの煮込み

とあるレストランで出会ったのが、この料理。カシラの煮込みである。カシラと呼ばれる肉の部位は、頭の脂、ゼラチン質から、こめかみや、ほっぺたあたりの肉までが含まれる、はずだと思う。すると、全部集めて煮込めば、肉、ゼラチン、脂などが、混然一体の…

鴨ささみの湯引き

パリの、マルシェと称するスーパーマーケットでは、日本ではみたことのない食材をいろいろ売っている。日本では滅多に見かけない仔牛は、ごく普通の食材で、肉はもちろんのこと、レバーやハツも普通に売られている。羊もいろいろな部位、それにやはりレバー…

アンドゥイエットの煮込み

というわけで、作ってみたのが、この料理。モツのソーセージ、アンドゥイエットを買ってきて、15センチほどあったものを2つに切る。これを、日本から持参した鰹出汁、醤油、日本酒、砂糖、生姜、ニンニク、タマネギといっしょに煮込み、日本から持参した味噌…

アンドゥイエット

アパルトマンには台所があるのだが、着いたばかりで料理の態勢が整わないため、レストランへ。この日行ったのは、ムフタール通りからエコール・ノルマル・シュペリュールの方に少し入ったレストラン街にある、バスク料理の店。この日のメインに選んだのは、…

鯛のXO醤蒸し

一昨年、シドニーの中国街で食べた牡蠣のXO醤蒸しがすばらしくおいしかった。帰国して作り方を調べ、いろいろ素材を選んだり手抜きをしたりして、今ではすっかりわが家の定番となっている料理法である。まず、XO醤を紹興酒で溶いておく。これを、フライ…

金沢「四十萬谷本舗」

この店は、金沢の漬け物の老舗。金沢市街の南側、寺院が密集する寺町の裏手に工場と本店を構える。麹味噌と酒粕を合わせた中に野菜を漬け込んだ「金城漬」がメインだが、冬季限定のかぶら寿しも美味。その他にも一夜漬けや魚介類の粕漬けなど、いろいろな製…

きびなごの醤油漬

きびなごが旬である。刺身を辛子酢味噌か生姜醤油でというのが、一般的な食べ方だが、一夜干しも格別。これは先日、「道産子」のあとで寄った、新宿やきとり横丁の「きくや」で食べた醤油漬け。かなり味が濃く、焼酎のロックに合う。新鮮なものが手に入った…

生桜海老

仕事のあと、新宿・やきとり横丁の「きくや」へ。ここはうまいモツ焼と刺身を同時に食べられるという、私にとっては貴重な店。柑橘系とハーバル系の香りのする不思議な味のハイボールも、三〇〇円と安くて美味しい。今日は、モツ焼を少し食べてから、旬の桜…

木の芽

今のマンションに引っ越してきて何ヶ月かたったとき、妻が庭に七−八センチほどの小さな山椒が生えているのを見つけた。鳥が種を運んできたのだろう。わずか数枚しか葉をつけていなかったが、端の方を少しちぎってつぶしてみると、確かに木の芽の香りがした。…

鶏もも肉のたたき

先日は、奥能登で地震があった。幸い、私の郷里である珠洲市ではさほどの被害がなかったが、母親の実家のある輪島市では、かなりの被害があった。電話がほとんど通じなくなっていたので、現地の人から何通か「大丈夫だったよ」メールが来たが、時々買い物し…

稚鮎の山椒煮

もう、鮎が売られている。もちろん養殖物だが、この時期の楽しみは、稚鮎である。頭からかぶりつき、内臓も身も一緒に口に入れて味わう。稚鮎の場合、塩焼きだと塩加減が強くなりすぎるきらいがある。焼いて食べるなら、素焼きにして山葵を載せ、醤油をかけ…

「やきとり」とは何か?

今朝の朝日新聞(東京版)に、作家の江上剛さんが「焼きトン」と題する一文を書いている。その冒頭部分はというと・・・・。 長年の疑問が氷解した。どんな疑問かというと「焼きトンをなぜ焼き鳥というのか」という疑問だ。その答えは「鳥ばかりでなく肉を串に刺し…

フォアグラと菜の花の酢の物

妻がロンドン土産に買ってきた瓶詰めのフォアグラを食べる。マニュアル通り、スライスした甘めのパンを軽く焼き、そのうえに載せてソーテルヌと合わせる。確かに旨い。お遊びでやってみたのが、これ。妻には止められたが(笑)。悪くはない。しかし、ワインに…