橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

トルコ料理の魅力

classingkenji2008-08-12

トルコ料理の代表格といえば、まずはシシ・ケバブ、ドゥネル・ケバブなど、肉を焼いた料理だろう。しかし、これと並んであげたいのは、野菜を使った前菜である。たとえば、焼きナスをヨーグルトと和えたナスのサラダ、トマトやキュウリなどの野菜を細かく刻み、辛口に仕上げたエズメ・サラタス、ぶどうの葉やピーマン、トマトなどに挽肉と米を詰めてスープで蒸し煮にしたドルマなど。野菜、とくにトマトの色が鮮やかで、味・香りとも強く、日本のトマトとは比較にならない。こうした前菜を何種類か盛り合わせたのがカルシュク・メゼで、トルコ料理のレストランに行くと、たいていこれを最初に注文する。店によっては、豆のサラダやペースト、魚の酢漬けなどをいっしょに出すこともある。白ワインによく合うが、ビールでも軽めの赤でもいい。ヨーグルトに塩やニンニクで味付けをするというところで、最初は驚くかもしれないが、素材の色と味を生かした料理だから、日本人の口にも合うと思う。(2008.8.5)