橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

トルコのエフェス・ビール

classingkenji2008-08-18

トルコのビールといえば、大部分がこのブランド。普及品のビール、黒ビールなど何種類かがあるが、いちばん日本のビールに近いのは、このピルゼンビール。樽生の状態のものも出回っていて、観光客がいるようなレストランの多くはこれを置いている。値段は幅があるが、330ccから500ccのグラスで5-7トルコリラ(5-700円)くらい。雑味のないすっきりした味で、苦みはやや少なめ。日本のビールでいえば、キリンの「一番絞り」に近い。この写真は、ボスポラス海峡の端にあって、イスタンブールの旧市街と新市街をつなぐガラタ橋で撮ったもの。この橋は二層になっていて、上は歩行者と車、路面電車が通り、下は飲食店街になっている。この飲食店街には、眺めのいいカフェがいくつかあり、海と向こうのイスタンブール市街を眺めながら食事ができる。
店そのものは紹介しない。なぜなら、店員に問題ありだから。イスタンブールの飲食店は、日本人とみると日本語や英語でかなりしつこく呼び込みをしてくる店が多い。ビールは5リラだ、眺めがいいぞという呼び込みにつられ、快適にビールを飲んでいたのだが、いざ勘定となると、ビールは6リラだという。たしかにメニューにはビール5リラとなっていたのだが、店員が手にしているメニューには6リラとある。マネージャーらしき男に、この店員はさっき5リラといったぞとクレームすると、5リラでいいという。多めに請求して、差額を懐に入れようとする不心得者らしい。トルコにはこんな店員が少なくないようだ。あるレストランで、寄ってきた野良猫がかわいいので声をかけたり写真を撮ったりしていたら、近づいてきた店員が「この猫、私が売ってやるから連れていけ」という。気づいたマネージャーに制止され、向こうへ退いた。商店でも値段が表示されていることは少なく、値段は店員によってまちまちだったりする。トルコにはまだ、近代的な商業倫理が確立していない部分があるようだ。確立すればいいというものではないのだが、少なくとも酒の値段くらいはっきりさせてもらわないと、落ち着いて飲めないというものである。(2008.8.6)