橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

イスタンブール「メルカン・カフェテリア」

classingkenji2008-08-19

イスタンブールは、トプカプ宮殿などのある旧市街、オフィスビルや商店街などがある新市街、船でボスポラス海峡を渡ったアジア側の三つの部分に分けられる。旧市街と新市街は橋でつながれていて、路面電車や徒歩で行き来することができる。新市街の中心はイスティクラル通りという商店街で、ブランドショップやレストランなどが立ち並ぶが、そこから左右に入ると、大衆的な雑貨店や飲食店が多くなる。その中に、肉や魚介類、野菜などを扱う店が集中した一角があり、そこにあるのがこの店。観光客もいるが、地元客も多く、値段は良心的。エフェスビールは500ccのジョッキで5トルコリラだし、メゼ(前菜)は3-5トルコリラケバブの盛り合わせや、大きなエビなど高級食材を使った料理でも、15-20トルコリラまで。明朗会計で、店員の対応もまずまず。メインは魚介料理で、とくにムール貝のフライやドルマは安くてとても美味しく、地元客はみんなこれを食べている。これと並ぶ名物らしいのが、ココレッチである。これは羊の腸をじっくり焼いて細かく刻み、辛めに味付けしたもの。モツ焼きの一種ということになるが、よく焼かれていてぱらりと仕上がっている。こてっちゃんを細かくしたようなものともいえるが、汁気はまったくなく、日本にはないタイプの内臓料理だろう。パンにはさんでファストフードのようにしたものが3トルコリラ。そして、皿に盛ったものが6トルコリラ。たいへん美味しく、エフェスビールによく合う。(2008.8.8)