橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

稚鮎の山椒煮

classingkenji2007-03-21

もう、鮎が売られている。もちろん養殖物だが、この時期の楽しみは、稚鮎である。頭からかぶりつき、内臓も身も一緒に口に入れて味わう。稚鮎の場合、塩焼きだと塩加減が強くなりすぎるきらいがある。焼いて食べるなら、素焼きにして山葵を載せ、醤油をかけ回すのが良い。天ぷらは格別だが、家庭では難しい。粉をまぶしてバターで焼けば、白ワインに合う。今日作ったのは、山椒煮である。あらかじめ昆布を一枚、水につけて戻しておく。山椒の実の生のものはなかなか手に入らないだろうから、佃煮で代用するか、あるいは中華スパイスとして売られている花椒を昆布と一緒に水につけておくといい。稚鮎はまず、グリルで焼く。これは、身を引き締めるとともに、養殖物の無駄な脂を落とすためである。焼いて食べる場合よりは長く時間を取り、焦げすぎないようにじっくり焼き上げ、冷ましておく。平鍋にまず昆布を敷き、稚鮎を並べ、昆布の戻し汁をかけ、酒、味醂、醤油、砂糖を加える。分量は、6:3:3:2くらいだろう。落としぶたをして、火にかける。落としぶたは、コーヒー用のペーパーフィルターを広げて使うと便利。最初は中火で、煮立ったら弱火にし、焦げ付かないようにときどき湯を足しながら三〇分ほど。煮汁が少なくなったところで火を止め、そのまま冷まして味を含ませる。日本酒なら何でも合うが、私は精米歩合の大きめの普通の純米吟醸が良いと思う。