橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

郡山「味の串天」

classingkenji2007-03-19

調査で郡山へ。八人で分担して調査対象者のインタビューを終えた後、夕食へ。行ったのは、前回と同じ「正月荘」で、やはり鯉珍味三点盛、鯉蒲焼き、馬刺の紅白盛など。ずいぶん食べ、地酒を何種類も飲んで、一人四二〇〇円程度。郡山の郷土料理を味わうには良い店である。
その後は、例によって一人で居酒屋へ。こちらも前回と同じ、「味の串天」。もつ焼きを中心に刺身、焼き物などいろいろ揃った居酒屋である。やはり飲み物は、東北には珍しいホッピー。焼酎は冷えていないようだったが、ジョッキとホッピーはよく冷えていて氷なしで出す、いわば「二冷」のホッピーを、火がちろちろと燃える囲炉裏端で飲む。今回は何となく頭がインタビューモードに入っていて、八〇歳近くかと思われる女主人に、ホッピーを置くようになった経緯を聞いてみた。詳しいことは分からなかったが、亡くなったご主人が「東京にホッピーというものがある」というので、社長さんに頼んで送ってもらうようになったとか。練馬から送ってくるとのことだから、どこかの酒問屋だろう。今でも東京から、年に何回かまとめて送ってもらっているとのことである。客は仕事帰りのグループを中心に、いろいろ。女主人も言っていたが、実に入りやすく親しみやすい。懐の深い居酒屋である。(2007.3.16)