カン風トリップ
城アラキの名作マンガ「ソムリエ」にこんなストーリーがある。世界的な名指揮者ペール・ブレイズが、主人公・佐竹城の店へやってくる。最高級の料理とワインを出さなければと意気込む支配人をよそに、城はふだん飲みのヴァン・ド・ターブルと、大衆的なビストロで出すような料理を用意する。もともと大衆趣味で高級料理に嫌気がさしていた指揮者は、そのサービスに感心し、日本に来たらまたこの店に来ようと約束する。出した料理のひとつが、この「カン風トリップ」(もうひとつは、アンドゥイエット)。ノルマンディー風のトリッパ、ようするにモツ煮込みである。以前から食べたいと思っていたのだが、デパートの食品売り場で、出来合いのものを売っていたので買ってきた。ノルマンディー名産のシードルやカルバドスといっしょに煮込むらしいが、基本的には淡泊な塩味で、わずかに胡椒とハーブの香りがする。使っている部位は、何種類かの胃袋で、少なくともガツ、センマイ、ハチノスが入っているようだ。醤油と酒を少し加えれば、ほとんど日本のモツ煮込みと変わらないものになりそう。たしかに、安い赤ワインによく合う。(2008.7.31)