橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

甲府「太助」

classingkenji2010-04-21

一泊二日で、山梨へ。宿泊は甲府で、ホテルに荷物を置いて早々に駅前へ。山梨の人は郷土料理に冷淡なところがあり、居酒屋も選んで入らないと、郷土料理がまったく置いてないなどということが珍しくない。とくに仕事関係で地元の人と飲みに行くと、魚介中心の店に連れて行かれることが多い。向こうにとってはこれがご馳走で、歓待しているつもりなのだろう。というわけで、入るなら郷土料理を前面に出している店にした方がいい。
甲府で郷土料理店といえば、市内および周辺に何軒かある「小作」が有名だが、もう何度も行ったので、別の店を探した。駅前の横丁で見つけたのが、この店。
郷土系のメニューは、馬刺し一〇〇〇円、煮貝二五〇〇〜三五〇〇円、桜鍋一五〇〇円、ほうとう鍋一〇〇〇円、山菜天ぷら六五〇円など。黒板メニューには馬煮込み六五〇円などというものもある。山菜天ぷらは何種類もが少しずつ盛り合わされている。適度に霜降りのはいった馬刺しは、申し分ない味。端肉をキノコや野菜といっしょに煮込んだ馬煮込みは、ゼラチン質が多くコクがありながらもすっきりした味。
瓶ビール五〇〇円、大生九〇〇円、中生四五〇円。日本酒は地元の酒が数種類あり、一合四〇〇円、三〇〇ミリリットルの冷酒は九〇〇−一〇〇〇円。山梨の居酒屋だから、もちろんワインも置いている。山梨県は、果実酒の一人あたり消費量が、全国でも群を抜いて多い。大衆酒場で、地元のご隠居さんが入ってくるなり「モツ煮込みとワイン!」なんて注文するというのは、甲府ならではの光景である。この店、驚いたことにホッピーがある。さすがに注文はしなかったが。(2010.3.24)

甲府市丸の内2-2-9