橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

新橋「やきとん玉や」

classingkenji2016-02-10

この日は、「酒類ビジネス新春セミナー」という業界向けのイベントで講演を頼まれ、新橋へ。高度経済成長期には格差が縮小し、とりあえずビール、次に日本酒という飲酒習慣が全国民に広がり、「酒中流社会」が実現した。しかしその後、格差拡大・貧困の増大とともに、人々は異なる飲酒習慣へと分け隔てられ、低所得層と若者が酒離れした「酒格差社会」に突入し、酒文化、そして酒類業界は危機に瀕している、と、こんな話をした。おおむね好評だったようである。
というわけで、久しぶりに新橋で飲むことにする。モツ焼きが食べたかったので、烏森付近で店を物色し、入ったのがこの店。モツ焼きは一三種類あって、一本一三〇円(つくねだけは一五〇円)。煮込みは四五〇円、モツ刺し類が四八〇円。酒は生ビールが五二〇円、酎ハイ類が三三〇円から四〇〇円程度、ホッピーセット五〇〇円(中外とも二五〇円)と、普通の値段。モツ焼きは、まあ美味い部類に入るといっていい。焼きトリッパという珍しいメニューがあるので注文してみると、ハチノスを油たっぷりでカリカリに揚げにしたようものが、コチュジャン添えで出てきた。これはこれで、なかなかよろしい。
サラリーマンで賑わっていて、この寒いのに外の席までまもなく満員になった。近くへ行ったら、寄ってみてもいいだろう。(2016.1.27)

港区新橋4-19-6
17:00〜23:30 日祝休