橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

田端「初恋屋」

classingkenji2011-07-19

今日は、必要があって文京区内をあちこち歩きまわる。たどり着いたのは田端で、田端文士村記念館が終点。田端の駅前には、深い切り通しの道路があって、田端文士村のあった丘は、無残にも南北に分断されている。とくに北側が小さく取り残された感で、ここに住んでいた芥川竜之介は、仲間たちから孤立した格好だ。この丘の一体感を失ったことは、田端の地域イメージを大いに低下させたといっていいだろう。
さて、この店はテレビでも紹介された有名店だが、私は初めての訪問。文士村とは線路と道路を隔てた低地にある。初恋で結ばれたという先代夫婦はもう引退し、若い男性が切り盛りしていたが、メニューや値段は変わっていないようだ。たしかに、魚が安い。大トロ五〇〇円、マグロブツ三五〇円、エンガワ、甘エビ、クジラが四八〇円、アラ大根煮が三〇〇円など。味はまあまあというレベルだが、コストパフォーマンスは非常に高い。
五時半頃入ったが、どんどん客がやってくる。予約の電話も、かかってくる。今度また、時間のあるときにゆっくりしたいものだ。(2011.6.22)

北区東田端1-12-1
17:00くらい〜 日祝休