橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

谷中「喜月」

classingkenji2011-07-13

ちょっと必要があり、谷中近辺を散策。谷中ぎんざはすっかり観光地化して、俗悪な臭いに支配されつつあるが、これと交差するよみせ通りの方は、古い商店街の雰囲気が残る。途中で見つけたのが、素朴な店構えのこの店。玄関に貼り紙があり、「当店の営業は水木金(祝祭日除)の三日間と致しております」とのこと。今日は水曜日。入ってみなければと、ちょっと仕事を済ませてから戻ってみた。
中は変形L字型のカウンターで、おかみさんが一人で切り盛りをしている。地元の中高年と、地元に住むと思われるサラリーマンで、すでに席は三分の二ほどが埋まっている。テレビがついていて、みんなが見ているのは巨人−ソフトバンク戦。こういう店ではほぼ確実に、みんな巨人ファンだ。お通しに出てきたジャコと山椒の実の煮物が素晴らしかった。おそらく、自家製だろう。空豆を注文したら、その場で色よく茹でてくれ、普通の二倍以上はあるだろうという量が盛られてくる。他の客が食べているものを見ても、みんな量が多い。酒は、ビール、酎ハイ、日本酒といった普通の品揃え。おかみさんが会津出身らしく、会津の酒があるので注文したら、鍋で軽くお燗して出してくれた。
あまり長居はしなかったが、雰囲気・味とも良く、近所に住んでいたら常連になっただろう。なかなか行く機会がなさそうだが、また寄ってみたい。ちなみに看板には「もつ焼き」とあるが、もつ焼は置いていないようだ。(2011.6.8)

台東区谷中3-13-6
水木金営業