橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

2015-01-01から1年間の記事一覧

第一六回「酒徒、襲来」

「若手の夜明け」の名でも親しまれている、人気の日本酒イベントが、この日、渋谷で行なわれた。陸奥八仙、一白水成、寫楽、天明、若駒、仙禽、青煌、羽根屋、紀土、出雲富士、ちえびじん、等々。近年評価の高い日本酒が目白押しである。全体の傾向は、淡麗…

ヤミ市酒場放浪記

3月21日(土)、新宿のネイキッドロフトで、「ヤミ市酒場放浪記」と題するトークイベントがあります。私と、『古典酒場』編集長であり、「酒とつまみと男と女」の「酔女」倉嶋紀和子さん、そしてヤミ市横丁研究所の井上健一郎さんが、ヤミ市酒場をめぐって語り…

「永利」

池袋駅の北西には、中華街といっていい一角が形成されつつあって、中国人が多数集まってくる。自宅とは反対方向ということもあり、あまり行かないのだが、この日はその少し先にあるこの店で、大学の飲み会をやることになった。集まったのは主に若手・中堅で…

「万事快調」

池袋には名酒居酒屋とクラフトビールの店が多いが、ここはなんと、両方を兼ね備えた店。看板には写真の通り、「KRAFT SAKE KRAFT BEER」の文字が。 日本酒は、「宗玄」「風の森」「悦凱陣」「隆」など、笹塚のH酒店から仕入れたと思われる二〇種類ほどが並ぶ…

「雨ニモマケズ」

どんどん進化していく「やきとんひなた」チェーン。今度は、正統派の割烹居酒屋だ。 メニューに並ぶのは、一〇種類ほどの刺身と、素材を生かした日本料理の数々。ふぐ料理、すっぽん料理もある。刺身盛り合わせは、円形の皿に美しく盛られてくる。蟹の甲羅揚…

「立春朝搾り」

以前も紹介した「立春朝搾り」。繰返しになるが、立春の日、日本名門酒会に参加する全国の蔵元が、夜半過ぎから醪を絞って酒にし(これを上槽という)、壜詰する。参加する酒販店も作業を手伝い、出来上がった酒を持ち帰り、その日のうちに売り出す。普通、日…

「銀座ライオン 銀座七丁目店」

この日は、ふと思い立って、池袋から銀座まで歩くことにする。コースは、グリーン大通りから護国寺の前に出て、坂を下って江戸川橋を渡り、その先から早稲田通りに入り神楽坂を通って九段に到り、千鳥ヶ淵、半蔵濠、桜田堀から銀座へ。赤い色で国会を包囲す…

『一個人』二〇一五年三月号

またまた雑誌の日本酒特集だ。目玉の記事は、表紙にもあるとおり「決定!至福の日本酒ランキング」。狩野卓也、山同敦子、ジョン・ゴントナー、山中基康など日本酒のエキスパート九人が審査員となり、吟醸酒、純米酒、本醸造、普通酒、無濾過・生原酒のBEST1…

「蛍月」

この日は『居酒屋ほろ酔い考現学』文庫版の完成祝いで、この店へ。編集者たち三人と、打ち上げである。けっこう知られた店だが、何となく一人では入りにくいので、これまで行ったことがなかった。もとはといえば、名酒居酒屋さきがけの一つだった「味里」の…

神戸「四文屋 三宮二号店」

この日は日本社会学会大会で神戸大学へ。階級・階層関係の部会を中心に、久しぶりに真面目に報告を聞いた。終わったあとは、神戸に住む知人若手と三宮へ。店を物色していて、見つけたのはこの店。一軒目に入るのもどうかと思うので、最初は魚と日本酒のおい…

日本酒特集相次ぐ

先日、「東京人」の最新号を紹介したところだが、その後も雑誌で日本酒特集が相次ぎ、日本酒ラッシュの感がある。喜ばしいことだ。今年は紛れもなく、日本酒復興の年である。dancyu2015年2月号出版社/メーカー: プレジデント社発売日: 2015/01/06…

大阪「赤垣屋」

久しぶりの大阪の夜、二軒目はここ。なんとビル1階のモール、「明治屋」の並びに、この店がある。何とぜいたくなモールであることか。この日は入らなかったが、もう一軒「正宗屋」という大衆酒場もあって、ここは簡単に梯子酒ができる大衆酒場パラダイスだ。…

大阪「明治屋」

大阪が誇る日本の名店だが、実は私は今回が初めて。ご覧の通りの店構えは、まるで明治か大正期を描いた映画のセットだ。移転したものの、店の空気までもってきたかのように変わっていないと言われていたが、確かにそうなのだろうと思う。最近できた店にはと…

謹賀新年

皆さん、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 今年は着実な目標として、居酒屋記事の週1回更新を続けたいと思います。 画像は、今年の年賀状です。こんな言葉遊びを、十年ほど続けています。