橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

大阪「明治屋」

classingkenji2015-01-04

大阪が誇る日本の名店だが、実は私は今回が初めて。ご覧の通りの店構えは、まるで明治か大正期を描いた映画のセットだ。移転したものの、店の空気までもってきたかのように変わっていないと言われていたが、確かにそうなのだろうと思う。最近できた店にはとうてい見えない。
カウンターに座ったが、実に居心地がいい。意外に、酒の種類が多い。土佐鶴、山形正宗、川鶴、秋鹿、菊姫神亀、雨後の月など、名だたる銘酒が揃っている。肴も幅が広く、何を注文しても旨い。店の雰囲気は、凜として落着いている。行儀の良くないグループ客もいるにはいるのだが、少し声が大きくなると、女主人が素早く近寄って注意をする。手を叩き始めると、やはり寄っていって手は叩かないでと注意する。店の雰囲気というものは、こうした努力で保たれるのだ。
次々に客が入ってくる。若い客が意外に多い。さっと飲んでさっと帰る客も多いので、さほど待たされることはなさそうだ。近くにあったら、私はきっと、毎週通うだろう。今度行くのは、いつになるだろうか。(2014.11.21)

大阪市阿倍野区阿倍野筋1-6-1 ヴィアあべのウォーク 1F
13:00〜22:00 日休