橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

第一六回「酒徒、襲来」

classingkenji2015-03-19

「若手の夜明け」の名でも親しまれている、人気の日本酒イベントが、この日、渋谷で行なわれた。陸奥八仙、一白水成、寫楽、天明、若駒、仙禽、青煌、羽根屋、紀土、出雲富士、ちえびじん、等々。近年評価の高い日本酒が目白押しである。全体の傾向は、淡麗より濃醇、辛口より旨口、そして香りがふわっと立ち上る。
私好みの酒である。私好みではあるけれど、もう少し別の酒も飲みたい。燗酒も飲みたい。手間がかかるせいもあるだろうけれど、燗で供しているのはごくわずか。
会場はご覧の通り、若者たちで一杯だ。日本酒がブームになりつつある。日本酒の販売数量は、大震災で一時的に増えたのを除き、何十年も低下し続けていたが、ようやく上向いてきた。今年は日本酒全体の夜明けの年だとみていいだろう。(2015.3.8)