橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「九州屋」

classingkenji2012-07-18

仕事のあと、新宿へ。新宿三丁目界隈を物色するが、なかなかこれはという店が見つからない。どうもこのあたりは、私と波長が合わないのか、続けて通う気になる店が見つからない。某チェーン系もつ焼き屋はあいかわらず満員盛況だが、秋元屋系を愛するものとしては、物足りない。そこで郷土料理系なら無難だろうと入ってみたのが、この店。あとで調べてみたら、ダイヤモンドダイニング系のチェーン店だったが、現地の食材を伝統的な方法で供する以上、大ハズレにはならないはずである。その上、生ビール(黒ラベル)がタイムサービスで一九九円というから、入ってみる価値はある。
メニューには、呼子のいか刺し、豊後サバ、もつ鍋、馬刺し、辛子レンコン、薩摩揚げ、人文字ぐるぐるなど、九州各地の料理が並ぶ。普通、郷土料理店というのは特定の県の料理を出すものだが、範囲は九州全域である。お通しに出てきたのは、明太子の盛り合わせ。三種類を試食させて、気に入ったら追加注文すればいいという趣向である。追加注文はしなかったが、お通しとして納得度は高い。酒は焼酎を中心にいろいろ揃っているが、ユニークなのは「九州の果実酒」で、デコポン、スモモ、ゆず、黒糖梅酒などが並んでいる。果実酒の好きな人には、うれしいだろう。
ビールが安かったとはいえ、半身一八七九円の豊後サバを食べたのでそれなりの勘定になったが、コスパは悪くない。目当ての店に入れなかった時など、選択肢に入れていい。(2012.6.29)

新宿区新宿3-6-11 第一玉屋ビルB1
月〜木・日・祝 17:00〜24:00
金・土・祝前 17:00〜04:00