橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

両国「吟」

classingkenji2012-07-21

今日は、必要があって深川あたりを歩く。終点は両国。六時過ぎ、あらかじめ探しておいて入ったのが、この店。
茶店だった場所を居抜きで使っているらしく、煉瓦で飾った外装も、カウンターに小テーブルがいくつかという店内の内装も、およそ日本酒の店らしくない。しかし、酒は良いものを揃えている。「鳳凰美田純米吟醸無濾過生」「開運・純米吟醸山田錦」「亜紀虎・夏純米吟醸」「不動・夏吟無濾過生」「百楽門・爽夏純米吟醸」といった具合。今年流行の「夏吟醸」をいくつも揃えているところがいい。料理の種類は多くないが、お通しからして焼いた椎茸と夏野菜のジュレというように凝っていて、酒と合わせてみたくなるものが揃っている。どこにでもあるメニューのエイヒレは、肉厚で柔らかい逸品。旬のイサキの刺身も、上出来だった。
今回初めて知った店だが、もう一〇年以上になるとのこと。このあたりは日本酒不毛地帯だから、存在意義は大きい。地ビールのポパイとこの店というのは、いい組み合わせになりそうだ。(2012.7.4)

墨田区両国2-14-8 つかさビル 1F
18:00〜23:30 日祝休