橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

浅草「伝一郎」

classingkenji2012-01-11

神谷バーの所まで戻ってみたが、やはり大入り満員。そこで、吾妻橋を渡った時に見つけ、気になっていたこの店に入ってみることにする。
ビールケースを積み上げたり、バラック居酒屋の雰囲気を出してみたりと、最近よくあるレトロ風味演出の店である。神谷バーの真ん前という好ポジションにもかかわらず、ホッピーセット四〇〇円(中外各二五〇円)、サワー類三八〇円など、安い。ホッピーに「しそ」「青リンゴ」「レモン」などと種類があるのがユニーク。どんな物か気になったが、あえて注文しなかった。メインの料理はモツ焼きで、一一〇円から一三〇円。その他、煮込み、唐揚げ、ハムカツ、冷奴、レバカツなど、大衆酒場メニューが揃っている。モツ焼きの味は、水準をいっていた。鶏の刺身三点盛りがおすすめだというので注文してみたら、うっすら湯引きをしたレバー、砂肝、ササミが角皿に盛られて出てきた。新鮮で、たいへん美味しい。レバ刺しにハツが付いてきたのは珍しい。実は、鶏のハツは大好物。適度に脂がのって、たいへん美味しかった。
最初は空いていたが、あとからサラリーマンが続々やってきた。店の人と親しく言葉を交わす客も多い。最近できた店だと思うが、固定客に恵まれているようだ。浅草では、煮込み通りの店よりこちらのほうがよさそう。

台東区雷門2-20-8
17:00〜24:00 無休