橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

東中野「路地裏酒場 ちょいと一杯」

classingkenji2007-12-23

これも、東中野ムーンロードの店。串焼き中心の居酒屋である。狭い店で、テーブル二卓とカウンター四席だけ。これを、若者が一人で切り盛りしている。まずホッピーセット(四五〇円)と煮込み(三八〇円)を注文。ホッピーに氷を入れるかと聞くところは、正しいホッピー酒場である。煮込みは、やや中華がかった味で、ごま油の香りがする。正統を外れるが、豚のいろんな部位と野菜がよく煮込まれていて、これはこれで美味しい。串焼きはものによって値段が違うが、豚は一二〇円、鶏は一五〇円が中心である。カシラを注文すると、肉と肉の間にタマネギの小片をはさんで焼いたものが出てきた。これは、先日行った椎名町の「かど」と同じスタイルである。ただ、これはカシラ限定らしく、シロやナンコツは普通に焼かれたもの。味は、ごく普通である。焼酎が二〇種類ほどあり、一杯五〇〇円から。森伊蔵(九八〇円)、佐藤の黒(八五〇円)などのレアものもある。私以外の客は、三〇歳くらいのカジュアル姿の男性二人客と、スーツにネクタイ姿の五〇代サラリーマンだけ。全体に、この通りの居酒屋はひっそりしている。場所が場所だけに、再開発される可能性は高い。いい雰囲気の小道なので、残しておきたい気はするのだが。(2007.12.18)