橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

笹塚「やきとん558 笹塚ホルモン」

classingkenji2010-06-15

株式会社イーケーシーが展開するやきとん中心の居酒屋チェーンで、各店舗を「○○店」ではなく「○○ホルモン」と称している。やきとんは、ハツ、レバ、カシラ、シロなど定番のほか、パイプ(血管)、うなじ(豚トロ)などを出し、鶏や野菜も何種類か。ギンナンなど一部を除いて一〇五円均一と安い。タン刺しやハツ刺しがあるのも、うれしい。ホッピーセット四五〇円、瓶ビール五五〇円、サワー類は三九〇円が中心。
注文した串が焼き上がると、ステンレスの皿を火にかざして温めてから盛ってくる。マニュアル通りとはいえ、いいやり方だ。焼き加減がよく、ジューシー。少々アミノ酸が前面に出るのが難点だが、悪くない。個人経営の店でも、これより不味い店はいくつもある。こういうチェーン店では、冷凍でスカスカになった串や、焼き焦げた串が出てくることはない。そんなものを出す権限が、店員にないからである。皮肉にも、チェーン店の方が最低ラインが厳しいわけだ。同じ理由で、とびきりおいしいものも出てこないが、これはこれで使える店だ。(2010.5.8)

渋谷区笹塚1-47-1 京王重機ビル2号棟2F
16:00〜23:30 無休