橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

正月の浅草

classingkenji2012-01-09

今日は、必要があって越谷市立図書館へ。駅から歩くと二〇分ほどかかる住宅地の中にあり、なかなかおしゃれな建物だ。ここで作家の野口冨士男が敗戦直後に、越谷にあった妻の実家に身を寄せていた頃の日記をまとめた『越ヶ谷日記』を手に入れる。注が完備し、あやふやなゴシップのたぐいなど一部を削除するなど、周到に編集されてている。ハードカバー三二一ページで二〇〇〇円。いい仕事だと思う。
帰りは、浅草へ。まずは業平橋駅で降り、スカイツリーを上方に見ながら浅草まで歩く。ちょうど日が傾く頃だったので、吾妻橋脇のビルが、いい色に撮れた。
神谷バー」に入りたかったのだが、超満員で断念し、ホッピー通り(煮込み通り)へ。ここも、九割方は客で埋まっている。煮込みが食べたかったので、「煮込み三種盛り」と張り紙のある店に入ってみた。このあたりは、もともと観光地価格の割高の店ばかりだが、それにしても瓶ビール七五〇円、ホッピーセット六〇〇円、酎ハイ類五〇〇円と、一段と高くなったようだ。しかも許せないのは、煮込みを発泡スチロールの器で、生ビールや酎ハイをプラスチックのコップで出してくること。酒や料理というのは、器の重みや感触があって完成するものであり、ピクニックやファストフード店じゃあるまいし、これでは居酒屋とはいえない。というわけで、煮込みと瓶ビール一本だけで出ることにする。よく見ると、周囲には同じスタイルの店が多い。煮込み通りも、堕落したものである。
というわけで、次の店を探すことにする。(2012.1.5)