橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

恵比寿「たつや」

classingkenji2009-04-03

ガーデンプレイスをあとにして、恵比寿の街へ出る。まだ、日は高い。恵比寿で昼から飲むなら、ここでしょう。というわけで、「たつや」へ。前回来たのは、二年前の夏だった。天井には魚拓がたくさん飾られている。それを眺めながら、ホッピーを飲む。
真っ昼間だから、さすがに空席が多い。飲んでいるのは、五〇代から七〇代の男性一人客と、六人ほどの若者たちのグループ、二〇代のおしゃれなカップル、そして奥の席には、スーツにネクタイ姿のサラリーマン四人組。若者六人組は、職場が同じなのか、いろいろと仕事の話をしている。サラリーマン四人組は、ひそひそと秘密会議のような雰囲気。カウンターで飲んでいる五〇代の男は、店主に向かって「北朝鮮のミサイル、腹立ってしょうがないよ。あんな国、みんなでミサイル打ち込んでやればいいんだよ」と周り中に聞こえる声で言い、「それやっちゃだめだよ、戦争になっちまう」とたしなめられている。その後は、自分の仕事の自慢話。ただし、「私は似顔絵を三〇年描いてるんですよ、三〇年。県知事の似顔絵も描いたことあるんですよ」というのだから、少々スケールが小さい。
少し日が傾いてきた。六〇代から七〇代の男性客が続々と入ってきて、店内は賑わってきた。明るいというのに、けっこう酔いが回ってきた。いや明るさとの落差があるから、酔いを早く感じるようになるのか。そろそろ、帰るとしよう。(2009.3.27)

渋谷区恵比寿南1-8-16  
8:00(月14:00)〜翌5:00 日休