橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

東駒形「稲垣」

classingkenji2009-03-10

神谷バーを出て吾妻橋を渡り、東駒形へ。都営浅草線本所吾妻橋の駅の少し手前で右に曲がると、この店がある。吾妻橋から徒歩五分ほどである。古くからやっている店のようで、地元客が多く、繁盛して増設しているうちに、戸建ての店がいくつかより集まった形になったという変わった店。カウンターもあるが、テーブル席と座敷が中心の店である。繁盛するだけあって、メニューは安くて豊富。串焼きと魚貝料理がメインだが、一般に居酒屋にあるようなものは何でも揃っている。
浅草のことだから、ビールがアサヒというのは仕方がない。もっともアサヒ嫌いでも、不思議と浅草では飲んでもいいかなという気分になってくる。大ジョッキ六五〇円は安い。三〇〇円と、これも安い酎ハイは、ごく普通の味だった。料理は四〇〇円から六〇〇円が中心。肝心のもつ焼きだが、四本四〇〇円。同じものを四本というのは一人客にはちょっとつらいと思いながら、カシラを注文して食べていたら、隣に座った常連客が、タンとシロを二本ずつと注文していた。常連さんの特権だろうか。
店員のオペレーションは、あまりいいとはいえない。小走りに店内を駆け回る割りには、料理や酒の出てくるのが遅いし、持っていく先を間違えることも多い。雰囲気も、一人客には少々肩身が狭いところがある。よそ者が足繁く通う店ではないが、浅草の地元民向け居酒屋をのぞいてみようくらいの気持ちで、一度訪問してみるというのは悪くない。(2009.3.5)

東京都墨田区東駒形3丁目25-4
17:00〜23:00 不定