橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

有楽町「うた」

classingkenji2007-06-11

二軒目に行ったのは、有楽町のガード近くにあるモツ焼きの店「うた」。道路にまで客があふれる活気のある店である。場所柄、安いというわけにはいかない。モツ焼きは一七〇円、焼鳥は一九〇円。ただし、一串がけっこう大きいので、損した気分にはならない。ビールはサッポロで、生が五五〇円だが、ここでぜひ飲みたいのは樽生ホッピー(四七〇円)である。写真のように氷入りでありながら、ジョッキの縁から三センチほど泡が立つ。すっきりした味わいで、ビールの類似品ではなく、まったく別次元の味。安いとはいえないが、この味なら許そう。この近くには、こうした戦後の雰囲気を残すモツ焼き屋が何軒かあるが、私はこの店がいちばん好きだ。ただし、客が多いときは注文の品がなかなか届かない。早めかつ計画的に注文しよう。
今日は週末だけあって、サラリーマンから女の子のグループまでさまざま。銀座周辺の客層の、くっきりしたグラデーションを感じる。平日と土曜日は午後三時から、祝日は二時から、日曜は休業。休みが取れた日、平日の昼間から飲むことができたら気持ちが良さそうである。(2007.6.8)