橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

江古田「一休」で飲むモルツ

classingkenji2007-06-01

今日は、ゼミのコンパ。会場は、江古田駅近くの「一休」。この店は、東京と埼玉に二十三店舗あるチェーン店で、発祥の地は高円寺らしい。東京で一番安いかどうかは分からないが、確かに安い店で、いつも学生たちでにぎわっている。サラダ、つくね、鰹のたたき、シュウマイ、焼きそば、鶏肉と野菜の炒め物、フレンチポテト、鶏の唐揚げなどのコース料理に、瓶ビールとサワー類などの飲み放題が付いて、二五〇〇円。三〇〇円プラスすると、生ビールやカクテル、本格焼酎など、飲み放題メニューが増える。ビールは、サントリーのモルツ。焼酎は一〇種類ほどあり、日本酒はなぜか沖正宗。味は、まあ値段から推して知るべしだが、食えないほどまずくはない。
近頃の学生たちの飲む酒だが、一時期までのサワー類一色という状態とは少し変わって、ビールを飲む学生が増えてきたような気がする。今日集まった学生は一二人だったが、一杯目に生ビールを選んだのが七人。サワー類が四人、ジュースが一人という構成。一杯目だけビールで、その後はサワー類という学生も含めての話だが、過半数がビールというのは近年あまりなかったことである。ビール復活の兆しがあるということか。それとも、発泡酒全盛時代にあって、飲み放題のビールに割安感が出てきたということか。しかも、驚いたのはビールの味の分かる学生もいること。ちょうど一年前、モルツのホップが米国系のカスケードに変わって、柑橘系のフレーバーになったと書いたが、最近はまた大陸ヨーロッパ系のホップに戻ったようだ。ある女子学生がこれに気づいていて、モルツの味が最近変わったとのたまうのである。近年ビールの凋落が著しいが、最近の若者だって、ビールを好むようになる素地はあるのだ。ビール復活のために何が必要か。まず第一に、馬鹿高い酒税を下げて、発泡酒と一本化することだろう。