橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「富士水産」「三福」

classingkenji2007-01-17

今日は、出版社との打ち合わせ(という名の飲み会?)で、池袋西口へ。まず入ったのは、池袋演芸場の角を入ったところにある「富士水産」。以前は、「居酒屋富士」という名前だったが、いつ頃からか魚介類を前面に出した形に改称し、店の外装もきれいになった。ただし、店の内部は昔のまま(笑)。メインの日本酒も「初孫」から「尾瀬の雪どけ」に変わったようで、これを数種類置き、他にも天狗舞、満寿泉、浦霞など十数種類。さらに、焼酎、サワー類、ビールはモルツとキリンクラシックラガーを置く。何と言っても、ここで注文すべきは刺身の六点盛だろう。六点盛と称してはいるが、実際には写真の通り一〇種類。これで、たったの一九八〇円。ただし、一人では食べ切れまい。カウンター席は五席ほどしかなくテーブル席が中心だが、店の中央に柱を囲んだ大きなテーブル席があり、ここならカウンター感覚で座れるだろう。客層は、三〇代から中高年の男性グループが中心で、中高年カップルも何組か。若いカップルが一組いたが、むしろ例外に近い感じである。服装は、ややカジュアル比率が高い。

次に入ったのは、駅のすぐそばの焼とんの店「三福」。ここはまさに、「オヤジの店」といっていいだろう。一階のカウンター席は、中高年男性でほぼ満員。ジャンパー姿の間に、ちらほらとスーツ姿が見える。われわれが席を取った二階は、やや若い人が多く、女性も皆無ではないが、それでも二五人中二二人までが男性で、二〇代二人、三〇代八人、四〇代二人、五〇代六人、六〇代四人といったところ。スーツにネクタイ姿とカジュアル姿が各一一人ずつと拮抗している。肝心の焼とんは一本一一五円だが、大振りで形も良く整えられており、乱雑に切って焼いたようなものではない。生ビールはサッポロ。ここは、オヤジ観察にはもってこいの店だ。次は一人で、ゆっくり飲むつもりで来ることにしよう。(2007.1.15)