橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

高田馬場「マルハチ」

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この日は大学からの帰り、ふと思い立って所沢で新宿線に乗り換え、高田馬場へ。駅の近くで日本酒が揃っていそうな店を物色。まず入ったのは、この店。若者向けの店構えで、店内のインテリアも配管がむき出しだったり、スパイダーマンのフィギュアがあったりという感じ。メニューも無国籍料理が多いが、刺身も数種類。

日本酒はというと、常備されているのが「十四代」「獺祭」「新政」「飛露喜」など超有名酒に、「陸奥八仙」「鳳凰美田」「風の森」といった実力派など三十種ほど。さらに季節メニューには「作」「五橋」「澤屋まつもと」など。これだけあれば、文句はない。値段はものによって違うが、一〇〇ミリリットルが五〇〇円から九〇〇円ほどが多い。

JRの駅を出てすぐ。場所柄、いつも静かに飲めるというわけではなさそうだが、手軽に日本酒を楽しむにはよさそうだ。(2018.11.17)

新宿区高田馬場2-16-5
17:00~翌5:00 無休

神戸「地酒バル 飲山」

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 この日は、学会で神戸へ。三宮駅近くのホテルを取り、近所で飲もうと出かける。日本酒が飲みたかったのだが、店頭のメニューや看板をみるかぎり、十四代、獺祭、飛露喜など、東京でいくらでも飲める超有名酒を前面に出した店ばかりだ。兵庫の酒を飲ませる店はないのかと、探し回って見つけたのが、この店。店名は「いんざん」と読むらしい。カウンター八席だけの小さな店だ。

龍力桜正宗、竹泉、来楽、香住鶴、八重垣、空蔵など、日本酒メニューには十六種類。有名なものも知らないものもあるが、すべて兵庫の酒だとのことで、六五〇円均一。その他、季節の酒も数種類。料理は、鶏肉の料理が数種類と、ナスの煮浸し、ごま和え、しらすおろしなどの手頃な酒肴が二十種類ほど。兵庫の酒を手軽に飲むにはいい店である。(2018.9.14)  

今年の立春朝搾り

 

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 毎年楽しみにしている「立春朝搾り」。今年はこの七種類。左から、梅錦、千代の亀、酒呑童子紀伊国屋文左衛門、旭日、月の桂、開華。まだ開華しか飲んでいないが、華やかな香りとフレッシュな米の味。すばらしい。酒販店で開華の仕込み水をもらったので、一緒に飲んでみると、まったく同じ味がする。酒の味は水で決まるというのが、よくわかる。

しかし、不満が一つだけ。ラベルのデザインをなんとかしてほしい。まるで神社のお札で、こんなものを眺めていても、酒はうまくならないし、そもそも消費者へのアピール力がなさ過ぎる。まるで、知っている人しか買わなくていいといってるみたいだ。春への期待、あこがれを表現した、もっと華やいだ雰囲気と、蔵の個性が欲しい。日本酒は近年、味もラベルも多様化が進んでいるのに、こんな素晴らしい商品が進化しないのは惜しい。平成が終わるのを機に、一新してほしいものである。

恵比寿「GEM by MOTO」

classingkenji2019-01-16

日本酒界のカリスマ・千葉麻里絵さんが満を持して開いた日本酒バー。電車だと広尾と恵比寿のほぼ中間で、どちらからも歩いて10分ほどかかる。コの字に少し足りないくらいのカウンターに10席ほどと、混雑時に4-5人飲めるかという立ち飲みコーナー。予約せずに行ったが、予約客が来るまでの一時間ほどならと入れてもらった。早めの時間なら、こういう入り方ができそうだ。

厳選された日本酒と肴。どうしても飲みたい酒があれば1-2種類ほど飲み、あとはマリエさんに銘柄も温度も任せてしまうのがいい。しかしマリエさんの技を楽しむためには、燗を頼んだ方がいい。客は、ともかく日本酒好きばかりのようで、酒類業界の人や、遠方から来た人もちらほら。日本酒ブームの「台風の目」的な店である。ときどき行きたいのだが、ちょっと自宅からは不便。誰かを誘って予約して行くのがよさそうだ。

そういえば、マリエさんが主人公のマンガが出た。日本酒ブームを牽引する人々の、心温まる交流が描かれていて、日本酒好きは必読だ。(2018.9.11)

渋谷区恵比寿1-30-9
7:00〜24:00 土・日・祝13:00〜21:00 月休

日本酒に恋して

日本酒に恋して

謹賀新年

classingkenji2019-01-02

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。昨年はすっかり、更新が滞ってしまいました。今年は高望みせず、せめて月1-2回程度の更新を細々と続けて行きたいと思います。
元旦は寝過ごして初日の出を見逃しました。これは今日の日の出です。東京・池袋より。換算2000mmの超望遠です。

大塚「北斎」

classingkenji2018-12-30

この夏にオープンした「大塚のれん街」の一軒。この一角、カテゴリー的にはいわゆる「ネオ横丁」に入るのだろうけれど、建物内部やガード下に展開するのではなく、各店が道路に面していて、独立性が高い。もともとあった店が改装したところもあり、ユニークな例といっていいだろう。この日初めて入ったのが、この店。
馬のかぶり物を着けた店員が呼び込みをしていて、女子高生たちが笑いながら通り過ぎていく。売り物は馬料理で、生肉刺し三種盛り(赤身・霜降り・タテガミ)が六五〇円、桜モツ煮込みが六三〇円のほか、カツ、ステーキ、柳川風など。刺身は各二切れずつだけだが、この値段なら納得だ。煮込みもすっきりした味で良い。日本酒が六種類あり、珍しい東京の「嘉泉」、福島の「寫楽」、熊本の「花の香」など、チョイスは悪くない。メインのビールがアサヒなのは残念だが、隅田川ブルーイングのエールもあるから、こちらにすれば問題ない。大塚駅の北口を出て正面に向かった都電の踏切を越えればすぐ。(2018.9.4)

豊島区北大塚2-28-2
16:00〜23:30 無休

さらば「お志ど里」

classingkenji2018-12-02

江古田のシンボル的存在だった大衆酒場「お志ど里」。閉店したという話は聞いていた。この日、毎月一度の散髪に行き、ついでに「酒の秋山」で紀土の新酒を買って、江古田駅に向かうと、目に飛び込んできたのがこの光景。ほんとになくなってしまったんだ。
最初に行ったのは、まだ大学院の修士二年の時だから、三五年前。武蔵大学で学会があった帰りに、先輩たちに連れてこられたのが最初だった。武蔵大学に勤めるようになってからは、何度も足を運んだ。何人の学生たちと、テーブルを囲んだだろう。
L字型の土地に建ち、入り口が二箇所あった。この土地をそのまま活用して建物が建ち、その一階に入る、などということは考えにくい。永久にお別れなのだろう。合掌。

金沢「酒屋 彌三郎」

classingkenji2018-09-17

ザルツブルク音楽祭から帰ったのもつかの間、能登杜氏組合の夏期研修会で講演を頼まれていたので、石川県へ。途中立ち寄った金沢で、入った店がここ。古民家を利用した和食の店である。
コースを頼んでいたので、料理のメニューは見ていないのだが、日本酒は「快」「華」「和」「醇辛」の四タイプに分けられていて、全部で十二種類がメニューに載っていた。たとえば「快」には「竹葉」、「華」には「雪の茅舎」、「和」には「遊穂」、「醇辛」には「五本槍」など。冷蔵庫には、他にも何種類か。ワインも何種類か置いている。
料理は基本は和風だが、クリームチーズを使うなどの工夫もある。前菜、炊き合わせ、造り、揚げ物、焼き物と進んで、最後は白海老の炊き込みご飯。一品の量が控えめなので、ちょうどい具合で食べ終わる。中心部から少し外れた場所で、鈴木大拙館の近く。客は地元の人ばかりのようだ。落ち着いた雰囲気で、料理と酒が楽しめる。金沢に何日か滞在することがあったなら、行ってみるといい。(2018.8.29)

金沢市本多町3-10-27
17:30〜24:00 日休

「木々家・七号店あずま通り店」

classingkenji2018-07-14

もつ焼きチェーンの快進撃が続く。「やきとんひなた」と並ぶ注目チェーンも、七号店を出すまでになった。
「ひなた」とは共通点とともに一長一短がある。共通点は、もつ焼きがうまいこと、リーズナブルなこと、メニューが多いこと、いい日本酒を置いていること。違う点を挙げれば、「ひなた」には魚の刺身とイタリアンメニューがあるのに対し、「木々家」は「味のマチダヤ」の協力を受けているだけあって日本酒と焼酎の種類が桁違いに多く、一号店のお母さんの手になる、お袋さん的なお惣菜メニューがある。
「木々家」はもつ焼きのボリュームがありすぎて、一人ではいるのは辛いところがあるが、嫌いではない。六月一日に開店したというこの店も、十分楽しめた。(2018.6.2)

豊島区南池袋3-16-8
17:00〜24:00(日祝〜23:30) 無休

大宮「いづみや本店・第二支店」

classingkenji2018-06-05

この日は、ヤミ市研究会で大宮へ。以前、思い出横丁でご一緒した埼玉大学の面々との交流会である。
大宮市内を歩くのは初めてなので、まずは大宮公園駅で降り、歴史民俗博物館、大宮公園氷川神社と回り、参道を通って駅前へ。待ち合わせまで少し時間があったので、「いづみや本店」に入る。日暮里店は何度か行ったが、この店は初めてだ。なるほど、大衆酒場の王道。とくにうまいもの・うまい酒があるわけではないが、大衆酒場ファンなら必ず好きになる店だ。
三〇分ほど飲んでいるうちに、店はほぼ満員に。待ち合わせ場所で合流し、店に戻るとこの人数では入れないということで、第二支店へ。はからずして、二店とも制覇した形になった。(2018.5.2)

埼玉県さいたま市大宮区大門町1-29
10:00〜22:00 不定