橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

恵比寿「GEM by MOTO」

classingkenji2019-01-16

日本酒界のカリスマ・千葉麻里絵さんが満を持して開いた日本酒バー。電車だと広尾と恵比寿のほぼ中間で、どちらからも歩いて10分ほどかかる。コの字に少し足りないくらいのカウンターに10席ほどと、混雑時に4-5人飲めるかという立ち飲みコーナー。予約せずに行ったが、予約客が来るまでの一時間ほどならと入れてもらった。早めの時間なら、こういう入り方ができそうだ。

厳選された日本酒と肴。どうしても飲みたい酒があれば1-2種類ほど飲み、あとはマリエさんに銘柄も温度も任せてしまうのがいい。しかしマリエさんの技を楽しむためには、燗を頼んだ方がいい。客は、ともかく日本酒好きばかりのようで、酒類業界の人や、遠方から来た人もちらほら。日本酒ブームの「台風の目」的な店である。ときどき行きたいのだが、ちょっと自宅からは不便。誰かを誘って予約して行くのがよさそうだ。

そういえば、マリエさんが主人公のマンガが出た。日本酒ブームを牽引する人々の、心温まる交流が描かれていて、日本酒好きは必読だ。(2018.9.11)

渋谷区恵比寿1-30-9
7:00〜24:00 土・日・祝13:00〜21:00 月休

日本酒に恋して

日本酒に恋して

謹賀新年

classingkenji2019-01-02

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。昨年はすっかり、更新が滞ってしまいました。今年は高望みせず、せめて月1-2回程度の更新を細々と続けて行きたいと思います。
元旦は寝過ごして初日の出を見逃しました。これは今日の日の出です。東京・池袋より。換算2000mmの超望遠です。

大塚「北斎」

classingkenji2018-12-30

この夏にオープンした「大塚のれん街」の一軒。この一角、カテゴリー的にはいわゆる「ネオ横丁」に入るのだろうけれど、建物内部やガード下に展開するのではなく、各店が道路に面していて、独立性が高い。もともとあった店が改装したところもあり、ユニークな例といっていいだろう。この日初めて入ったのが、この店。
馬のかぶり物を着けた店員が呼び込みをしていて、女子高生たちが笑いながら通り過ぎていく。売り物は馬料理で、生肉刺し三種盛り(赤身・霜降り・タテガミ)が六五〇円、桜モツ煮込みが六三〇円のほか、カツ、ステーキ、柳川風など。刺身は各二切れずつだけだが、この値段なら納得だ。煮込みもすっきりした味で良い。日本酒が六種類あり、珍しい東京の「嘉泉」、福島の「寫楽」、熊本の「花の香」など、チョイスは悪くない。メインのビールがアサヒなのは残念だが、隅田川ブルーイングのエールもあるから、こちらにすれば問題ない。大塚駅の北口を出て正面に向かった都電の踏切を越えればすぐ。(2018.9.4)

豊島区北大塚2-28-2
16:00〜23:30 無休

さらば「お志ど里」

classingkenji2018-12-02

江古田のシンボル的存在だった大衆酒場「お志ど里」。閉店したという話は聞いていた。この日、毎月一度の散髪に行き、ついでに「酒の秋山」で紀土の新酒を買って、江古田駅に向かうと、目に飛び込んできたのがこの光景。ほんとになくなってしまったんだ。
最初に行ったのは、まだ大学院の修士二年の時だから、三五年前。武蔵大学で学会があった帰りに、先輩たちに連れてこられたのが最初だった。武蔵大学に勤めるようになってからは、何度も足を運んだ。何人の学生たちと、テーブルを囲んだだろう。
L字型の土地に建ち、入り口が二箇所あった。この土地をそのまま活用して建物が建ち、その一階に入る、などということは考えにくい。永久にお別れなのだろう。合掌。

金沢「酒屋 彌三郎」

classingkenji2018-09-17

ザルツブルク音楽祭から帰ったのもつかの間、能登杜氏組合の夏期研修会で講演を頼まれていたので、石川県へ。途中立ち寄った金沢で、入った店がここ。古民家を利用した和食の店である。
コースを頼んでいたので、料理のメニューは見ていないのだが、日本酒は「快」「華」「和」「醇辛」の四タイプに分けられていて、全部で十二種類がメニューに載っていた。たとえば「快」には「竹葉」、「華」には「雪の茅舎」、「和」には「遊穂」、「醇辛」には「五本槍」など。冷蔵庫には、他にも何種類か。ワインも何種類か置いている。
料理は基本は和風だが、クリームチーズを使うなどの工夫もある。前菜、炊き合わせ、造り、揚げ物、焼き物と進んで、最後は白海老の炊き込みご飯。一品の量が控えめなので、ちょうどい具合で食べ終わる。中心部から少し外れた場所で、鈴木大拙館の近く。客は地元の人ばかりのようだ。落ち着いた雰囲気で、料理と酒が楽しめる。金沢に何日か滞在することがあったなら、行ってみるといい。(2018.8.29)

金沢市本多町3-10-27
17:30〜24:00 日休

「木々家・七号店あずま通り店」

classingkenji2018-07-14

もつ焼きチェーンの快進撃が続く。「やきとんひなた」と並ぶ注目チェーンも、七号店を出すまでになった。
「ひなた」とは共通点とともに一長一短がある。共通点は、もつ焼きがうまいこと、リーズナブルなこと、メニューが多いこと、いい日本酒を置いていること。違う点を挙げれば、「ひなた」には魚の刺身とイタリアンメニューがあるのに対し、「木々家」は「味のマチダヤ」の協力を受けているだけあって日本酒と焼酎の種類が桁違いに多く、一号店のお母さんの手になる、お袋さん的なお惣菜メニューがある。
「木々家」はもつ焼きのボリュームがありすぎて、一人ではいるのは辛いところがあるが、嫌いではない。六月一日に開店したというこの店も、十分楽しめた。(2018.6.2)

豊島区南池袋3-16-8
17:00〜24:00(日祝〜23:30) 無休

大宮「いづみや本店・第二支店」

classingkenji2018-06-05

この日は、ヤミ市研究会で大宮へ。以前、思い出横丁でご一緒した埼玉大学の面々との交流会である。
大宮市内を歩くのは初めてなので、まずは大宮公園駅で降り、歴史民俗博物館、大宮公園氷川神社と回り、参道を通って駅前へ。待ち合わせまで少し時間があったので、「いづみや本店」に入る。日暮里店は何度か行ったが、この店は初めてだ。なるほど、大衆酒場の王道。とくにうまいもの・うまい酒があるわけではないが、大衆酒場ファンなら必ず好きになる店だ。
三〇分ほど飲んでいるうちに、店はほぼ満員に。待ち合わせ場所で合流し、店に戻るとこの人数では入れないということで、第二支店へ。はからずして、二店とも制覇した形になった。(2018.5.2)

埼玉県さいたま市大宮区大門町1-29
10:00〜22:00 不定

西日暮里「串道楽」

classingkenji2018-04-05

この日は、西日暮里へ。新しい店を見つけたいと思って駅周辺を歩き回り、見つけたのがこの店。店頭にホワイトボードのメニューがあり、魚料理十数種類と、日本酒数種類が記されている。
店主と女将の二人で切り盛りする小さな店。カウンターが六席と、小さな座敷のみ。日本酒の飲み比べセットというのがあったので、いただくことにした。参乃越州菊姫・先一杯、久保田千寿、道灌・吟醸、奥の松・純米と、あまり珍しくはないが許容範囲の品揃え。ここは、料理を楽しむ店のようだ。冷や奴、もろきゅう、焼鳥といった定番メニューはカウンター上の黒札に下がっているが、ここではホワイトボードメニューから注文すべきだろう。
活うまづらはぎ刺身七五〇円、活おこぜ刺身七六〇円、活そい刺身八〇〇円、おこぜ姿煮六五〇円など。価格設定が細かいところに、良心的な商売を感じさせる。うまづらはぎをいただいたが、身は美しい薄切りで、肝も十分ついている。主人はかなりの目利きで、良い腕の持ち主のようだ。おこぜの姿煮も悪くなかったが、刺身にした方が良かったかなと思う。また来てみたい店である。(2018.3.3)

荒川区西日暮里5-33-5
17:30〜23:30 日休

「魚と酒 はなたれ」

classingkenji2018-03-17

この日は築地の朝日新聞社で、『下流老人』の著者、藤田孝典さんと対談。その模様は、AERAの2018年2月26日号でお読みいただける。終わったあとは、新橋で飲む場所を探す。いろいろ徘徊したあと、見つけて入ったのがこの店。カウンターが一席空いているだけのところへ滑り込んだ。六時少し前に入ったのだが、予約客があるので六時までと時間を限って入れてもらった客が何人かいて、人気店であることがうかがえる。
八種盛られて一三八〇円の刺身の盛り合わせが、美味い。そして日本酒の品揃えが良い。いずれも一五〇ミリリットルで、「而今」九〇〇円、「川中島」九五〇円、「久礼」八〇〇円、「昇竜蓬莱」九五〇円など。しかも二〇時までは半額だというので、四杯ばかり楽しませていただいた。料理は、小皿で出てくるお任せの「本日のあて」、六皿九八〇円、八皿一二八〇円、一〇皿一六〇〇円など。
調べてみると、都内に一〇軒ほどあるチェーン店らしい。個人営業テイストの魚割烹で、なかなか良い店だと思う。(2018.2.9)

港区新橋3-21-2江藤ビル1F
11:00〜24:00 日休

椎名町「おぐろのまぐろ」

classingkenji2018-02-19

この日は、通信制の卒業研究発表会。三人の発表を聞いたあと、学生たちと一緒に所沢の「百味」で昼酒を飲む。四時頃で解散したのだが、まだ飲み足りないので、椎名町へ。見慣れない店を見つけた。
もともとはマグロを中心に魚と惣菜を売っていた店だが、立ち飲み屋として新装開店したらしい。やはり料理の中心はマグロで、一人一回だけ注文できる「まぐろの枡盛り」(一九九円)は、複数の部位の大きなマグロぶつが五切れほど入ったサービス品。その他メニューは、まぐろねぎヌタ(四九九円)、ツナポテトサラダ(四九九円)、まぐろのユッケ(三九九円)など。酒は生ビールとビール中瓶が四八〇円、ホッピーセット三八〇円、熱燗三八〇円など。もう少し日本酒があればいいのだが。駅北口から、徒歩一分ほど。(2018.1.28)

豊島区長崎1-4-17
16:00〜23:00 日休