橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中目黒「ごっつぁん」

classingkenji2013-09-11

集中講義の二日目が終わったあとは、中目黒へ。まずは有名店の「串八」へ。最初、あまりの喉の渇きに大ジョッキを注文してしまったのが失敗。つい忘れていたのだが、この店は酒三杯と料理三品で一三四〇円という格安の晩酌セットが名物なのである。この場合、酒の選択肢に中ジョッキはあっても大ジョッキはない。だからこの時点で、セットから脱落してしまった。残念ながら、セットは次の機会ということにして、串揚げをいただき、次の店へ。それが二軒隣の、この店。
店の前の黒板に「なんでも三五〇円」とある。しめさば、あじたたき、カツオ刺し、穴子白焼きなど、すべて三五〇円だというのだ。店内は、右側にカウンター。左側は、店の幅が狭いためか、壁を背に座る形のテーブルが並ぶ。カウンターのすぐ内側に炉があり、次から次へと魚介類を焼いている。穴子はかなり肉厚のものが一本まるごと。味も良い。蛤を注文すると、スーパーなどで見かけるものとは別物の、ちゃんとした料理屋サイズのものを取り出し、裏返したり、出た汁を殻に戻したりと手間をかけてじっくり焼いてくれた。しかも、一人前が三個。これで三五〇円は、びっくりするほどの安さだ。気分が良くなり、この店で一番高い酒かと思われる玉乃光の小瓶を注文し、じっくり飲ませていただいた。
中目黒は今、都内でも屈指の食べ飲みどころといっていいだろう。おしゃれ系のレストランが注目されることが多く、先日の「アド街ック天国」もその路線だったが、大衆酒場にも事欠かない。家から遠いのが惜しい。(2013.8.2)

目黒区上目黒3-7-5
17:00〜24:00 日祝休