橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

中目黒「藤八」

classingkenji2011-09-01

二軒目は、前から行きたいと思っていたこの店。
ビールを注文するとすぐに出てきたお通しがいい。エビとなす、インゲンの炒め煮で、彩りも良く、味もしっかり。これだけで、いい居酒屋だとよくわかる。マグロぶつはとくに特徴はないが、堅実な居酒屋のマグロぶつで、これで三八〇円は安い。すばらしかったのは、店の名物だという自家製腸詰め(四二〇円)。中国風をアレンジしたものらしく、焼いてから薄くスライスしたものが一二枚。ネギと豆板醤が添えてある。スパイスがほどよく、肉の旨みが凝縮している。
カウンターとテーブル席、奥には広い座敷。壁には、メニューの短冊のほか、酒メーカーのポスターが新旧取り混ぜてバラバラに貼られているが、かといって無秩序というわけではなく、どこか様になっている。ビール大瓶五五〇円、ホッピー四二〇円、日本酒二一〇円など、値段も安い。古風で正しい昭和の居酒屋。この店だけを目当てに、中目黒に来ても良さそうである。(2011.8.4)

目黒区上目黒1丁目3-16
17:00〜23:00 日祝休