橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

春日「遠州屋」

classingkenji2011-08-08

春日は、本郷台地と小石川台地にはさまれた谷間にあたる場所で、昔は下町風の商店街だった。今ではジェントリフィケーションが進み、道の両側がマンションだらけになってしまったが、それでも老舗が何軒が残っている。この店などは、見るからに下町大衆酒場の趣があり、「もつやき 煮こみ」の看板など、まさに下町風。もつ焼きは肉が四切れで、手元から一番目と二番目の間にネギがはさんであるのが特徴。半ネギマというわけで、ちょっとうれしい。相撲好きの店らしく、写真や手形など飾られているほか、メニューにはちゃんこ鍋もある。値段は普通で、とくに安くも高くもない。
文京区に下町風大衆酒場があるのは、この界隈と根津、湯島。つまり、東大から坂を下りた場所である。東大が山の手、周辺が下町という図式だ。その中で春日は地味な存在だが、たまには足を運んでみたい。(2011.7.12)

文京区小石川1-9-6