橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

笹塚「大国家」

classingkenji2010-06-14

笹塚は、渋谷区が西側へ半島のように飛び出し、杉並・世田谷両区と接している場所。京王線では急行が止まる最初の駅。駅の近辺は整備されて都心の香りがするが、北側へ出て甲州街道を渡ったところと、南側の両方に、懐かしい雰囲気の商店街がある。北側の商店街には、一部の日本酒ファンの間でカリスマ的な人気をもつ「本間酒店」がある。極上の純米生原酒を手に入れることができる店で、私もときどき買いに行く。飲食店にも、おしゃれ系と大衆酒場系の二系列があるが、駅前にあるこの店は後者の代表格だろう。
長いL字型カウンターと、テーブル一卓のみ。下町にあってもおかしくない大衆酒場の雰囲気である。ビール大瓶六五〇円は安くはないが、場所を考えれば妥当なところ。日本酒は一合三五〇円から。刺身、ヤキトリ、もつ煮込み、ポテトサラダなど、正統派大衆酒場のメニューがずらりと並ぶ。客は、地元の高齢者を中心に、最前線を引退した嘱託風のサラリーマン、中年夫婦など。笹塚へ行くことがあれば、寄ってみても悪くない。(2010.5.8)

「大国家」 渋谷区笹塚1丁目57-16
「本間酒店」 渋谷区笹塚2-43-7 http://honma3ke10.exblog.jp/