橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「萬屋松風」

classingkenji2011-05-02

震災の影響で、新学期はいつにも増してあわただしい。仕事を終えたあと池袋へ出て、この店へ。やはり震災の影響で飲食店は客の入りが悪いというが、この店はまあまあ客が入っている。以前も紹介したが、日本酒をいろいろ揃え、刺身や定番の料理が美味しくて、値段はリーズナブルという店。唯一の関門は、店構えがあまり入りやすそうでないところだが、入ってしまえば民芸風のよくある雰囲気である。
日本酒は、二〇種類ほど。東北の酒もいくつかあり、今日最初に飲んだのは、福島は喜多方市の「星自慢・特別純米無濾過生原酒」。美しい名前だが、蔵元の名字が星といい、その自慢の酒ということに由来するとか。味もきれいだ。生原酒だがけっしてくどくなく、品のいい香りと甘味である。まわりをみても、東北の酒を注文する人がいつもより多いような気がする。被災地の産品を買って支援しようという機運が生まれたのは、今回が初めてではないだろうか。酒に限らず、現地の産品は流通にいろいろ困難があるだろうから、流通を手助けする仕組みが必要である。(2011.4.7)

豊島区西池袋1-24-5
17:00〜23:30 無休