橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

有楽町「南部家」

classingkenji2011-04-27

震災の被害の大きかった岩手・宮城・福島関係の居酒屋を探している。東北では山形・秋田・青森関係の居酒屋はけっこう多いのだが、岩手・宮城・福島関係は少ない。しかも、恵比寿の「いはとーぶ」、四谷の「會津やまっちゃん」は、震災の影響で閉店してしまった。店員の実家が被災したり、親会社の経営が悪化したためらしい。
比較的最近できた店が、ここ。泰明小学校と高架の道路をはさんだ反対側。インターナショナルアーケードの外側、といったほうが分かりやすいか。見た目からも想像できる通り、ここも浜倉的商店製作所がプロデュースしているらしい。岩手県産白金豚、三陸の海産物加工品、岩手山の漬け物など、メニューは岩手一色だが、欠品の多いのは仕方がない。通常メニューとは別に「義援金特別メニュー」というのがあり、これは注文するとその場で別会計の代金を払い、これが全額義援金になるというもの。花巻産ぶどうジュースをブレンドした花巻ビアー、花巻ハイボール、豚汁など数種類。さっそく花巻ビアーを注文してみたが、ぶどうの量の加減がいいのか、ベルギービールを軽くしたような味に仕上がっていた。
サラリーマン七人組がやってきて、全員花巻ビールを注文し、乾杯をはじめた。取材のカメラも入っている。隣の店はがら空きなのに、この店はどんどん客が入ってくる。こんな形で義援金が集まるのは、大変いいことだ。(2011.4.6)

千代田区有楽町2-1地先 インターナショナルアーケードC区画
16:00〜28:00(日祝〜24:00) 無休
http://r.gnavi.co.jp/a616418/