橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

野方「すっぴん酒場」

classingkenji2010-12-28

野方でもう一軒と、入ってみたのがこの店。もつ焼き中心の立ち飲み屋だが、店主は有名店で修業したとのことで、レベルは高い。もつ焼きは種類が多く、一本一〇〇円。レバ刺し(四〇〇円)はピンと角が立ち、新鮮そのもの。ホッピーセットが三八〇円と安いのもうれしい。支払いはキャッシュオンデリバリーで、カウンターに置いたかごにお金を入れておけば、その都度取っていってくれる。
入ったときは客が少なかったが、まもなく六人組がやってきてほぼ満員に。地元客に親しまれている店であることが分かる。カウンターだけの立ち飲み屋だが、不思議と居心地がいい。野方の駅から商店街を南に下り、突き当たりを右へ少し行き、「みつわ通り」という商店街へ入ってすぐ右側。野方にはまったく縁のない私だが、それでもときどき来るのは「秋元屋」があるから。そんな客は少なくないはずで、だから新しい店もできてくる。居酒屋は商店街の居間のようなもので、居心地が良くててうまいものが食べられれば客が好んでやってくる。商店街活性化の鍵は、居酒屋なのだと思う。(2010.12.17)

中野区野方5-18-4
16:00〜23:00 日休