橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「喜多八」

classingkenji2011-08-17

北千住の東口の商店街は、東京電機大学の東京千住キャンパスが建設されるなど再開発が進み、商店街の名前も「学園通り」「学園西通り」などと名前を変え、活気が出てきた。新しい居酒屋もいろいろ出来ている。来年春にはやって来る学生を目当てにしているのか、ホルモン系の店が多いようだ。
そこで見つけたのが、この店。隣では六〇過ぎの常連客が昔話に花を咲かせている。一人は、星一徹のような短髪で精悍な感じ。もう一人は、竹下登をボケさせたような感じ。おれは昭和四三年に千住に来たんだ。あんたは四四年だったな。この辺には飲み屋がなくて、反対側へ行って飲んでいた。その頃は、流しがいた、など。この店は昭和六三年開店とのこと。刺身中心の大衆酒場で、大入り満員。ビール大瓶五五〇円、サワー類三五〇円、マグロ中トロ中落ち六〇〇円など。西口にも行きたかったので、早めに席を立つと、「ごめんね、うるさくて」と声をかけられた。「いいえ、面白かったですよ」。いい店である。(2011.7.22)

足立区千住旭町4-18
17:00〜24:00 日休