橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「ささ亭」

classingkenji2009-05-08

二軒目は、この店。烏森神社の参道には、ヤミ市時代の店が、ほぼそのままの地割りで建て替えられたような飲食店が並んでいるが、そのなかの一軒である。それだけに、敷地は狭い。一階はカウンター四席と、四人掛けテーブル一卓のみ。二階には座敷があるらしい。カウンターの横の花生けの、菖蒲の花の紫が鮮やかだ。
女主人は、何年か前に夫を亡くし、店を継いだ。壁には店を紹介する新聞記事が貼られていて、見出しには「焼き鳥店継いだ妻 亡き夫に導かれて」とある。横には英字新聞の記事。"Woman 64, runs bar marathon"とあるとおり、この女主人はマラソンランナーで、ときおり常連客とマラソンの話に花が咲く。瀬古利彦も、訪れることがあるとか。
焼き鳥は一本一八〇円で、つくねは二〇〇円。酒は、ヱビスの中瓶が六八〇円、初孫四八〇円、冷酒一二〇〇円など。この参道の店としては、比較的入りやすい雰囲気だと思うが、いつも混んでいる。(2009.5.1)

港区新橋2丁目15-10