橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

三軒茶屋「戎参」 ホッピー価格の謎

classingkenji2009-03-26

この記事には、事実誤認がありました。この店のホッピー・ビールの値段は、再値下げはされていません。経緯については、こちらをご覧ください。

この店の生ホッピーが大幅に値上げされていたことについては、昨年の一〇月に書いたとおり。たしかに、四二〇円から四九〇円へ値上げされていた。それ以来、あまり入る気がしなくなって遠ざかっていたのだが、店の前を通りかかってびっくり。値段が四二〇円に戻っている。それだけではない。前回来たときには、中ジョッキ五三〇円、中瓶六〇〇円とやはり大幅値上げされていたビールの値段も、元に戻っている(写真は、右側が昨年一〇月、左が今日のもの)。ホッピー社の姿勢のみならず、居酒屋の経営環境について考えさせられてしまう。
まずホッピーの大幅値上げがあり、この店はこれに便乗して、仕入れ価格の上昇分を超える値上げをしたはず。ところが、そのために売り上げが大幅に減り、やむを得ず値段を元に戻したのだと思われる。問題は、その際にホッピー社からの仕入れ価格も元に戻っているのかどうかである。完全に元に戻ったとは考えにくいが、かといって大幅に値上げされたままだとすると、値段を完全に元に戻すことが経営的に可能とは考えにくい。スーパーなどでのホッピーの販売価格はばらばらで、値上げしたところもあればしていないところもある。ホッピー社自身に経営判断のミスがあり、後になって値上げ幅を圧縮したと考えるのが自然だろう。
もうひとつの問題は、ビールの価格である。この店はビールについても、生を五〇円、瓶を一〇〇円と、仕入れ価格の上昇を大幅に上回る便乗値上げをしたのだが、やはり売り上げは落ちたはず。しかしビールが三−五%値上げされたのは公表されている事実で、その後元に戻ったことはないから、値段を完全に元に戻したのでは、利益は減るはずだ。
大衆酒場が酒の価格を簡単に上げられる状況にないことと、そして酒の元売り価格の安易な値上げが大衆酒場の経営を圧迫するということだけはたしかで、この店の価格のブレは、その例証になると思う。今日は先を急いでいたので前を通り過ぎただけだったが、次回は生ホッピーを飲みに立ち寄ることにしよう。(2009.2.24)

世田谷区三軒茶屋2-13-7
16:00〜23:00 無休