橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「たつみ」ビール大幅値下げ

classingkenji2009-05-30

下高井戸シネマへ「チェ 39歳 別れの手紙」を見に行く。前編の「28歳の革命」はおもしろかったが、後編は山岳行脚と戦闘シーンばかりで、あまりおもしろくない。これはゲバラボリビアでの戦いが、苦しいことの連続で目立った戦果も進展もなかったことの反映だろう。とはいえ、社会主義キューバの建国とか、再びゲリラ戦へ赴くことを決意する過程とか、その前の段階で描くべきことはなかったのか。
と思いつつ、「たつみ」へ。金曜日の九時頃だから、超満員。空席が少なく、初めて三階に通された。酔っぱらった学生がわあわあ騒いでいる。壁には、こんな貼り紙が。サントリーモルツ、大幅値下げである。ジョッキは四二〇円で、ホッピーと同じになってしまった。この店のホッピーは三冷で、同じ大きさのジョッキに入れてくるから、文字通り同価格である。周りを見ると、みんなビールを飲んでいる。ビールとホッピーでは、ジョッキ一杯にかけられている酒税は大きく違う。仮に、中ジョッキに入っているビールの泡の立つ前の容積が四〇〇ミリリットル、同じくホッピーを作るのに使用された二五度の焼酎が一〇〇ミリリットルとすると、酒税はそれぞれ八八円、二五円である。にもかかわらず、同価格だ。これは、サントリーがシェア三位を死守するために値引き攻勢をかけているであろうことを割り引いても、ちょっと考えものではないか。(2009.5.22)