橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

吉祥寺「いせや総本店」

classingkenji2009-03-27

吉祥寺の顔ともいうべき存在だった、木造二階建てのいせや総本店が取り壊されて、もう二年半。当時の雰囲気を残しながらビルに建て替えられ、昨年夏には完成したと聞いていたが、これまで機会がなく、今日になって初めて訪れた。建物は、写真の通り。高層ビルの部分が、思ったより奥に引っ込んでいるので、「いせや」の部分にのしかかっているような感じではなく、うまく復元したなと感心する。
中は、少し狭くなったか。カウンターに通されたが、カウンター下に酒のケースが置いてあって、座りにくい。しかし、中から外の立ち飲みカウンター、そして街ゆく人々を眺めながら飲むその居心地は、基本的に昔のまま。ビールはサッポロラガー大瓶五〇〇円、やきとり四本三二〇円。ビールは二〇円値上がりしたが、仕入れ価格の分だけだから良心的。やきとりの値段は、変わっていない。まだ明るいうちだったので、昔やっていた仕事の話などしている六〇すぎの男性客が多い。立ち飲みカウンターには、ときどき若者がやってきて、さっと飲み食いしてさっと帰る。暗くなるにつれて、だんだん昔の店と見分けがつかなくなってくる。この店が、あまり変わらぬままに続いていることに感謝したい。ただし、やきとりの味はごく普通だから、あまり期待しないこと。(2009.3.26)

武蔵野市御殿山1-2-1
12:00〜22:00 火休