橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「笹周」

classingkenji2009-02-16

今日は、新著の打ち上げで池袋へ。西口で編集者二人と待ち合わせ、まず向かったのはこの店。一九五一年創業という老舗で、昔から名店として知られている。店構えも堂々たる風格。席はすべて板の間で、一階なら囲炉裏端となり、目の前で魚が焼き上がるのをみることができる。まず注文したのは、刺身の盛り合わせと名物の焼魚。イカは甘味が強く、鯛は天然らしく歯ごたえがあり、しかも旨みがしっかりしている。新潟名物でもある鮭の味噌漬けとカマは、期待どおりの味。この店の名物は鴨鍋なのだが、なにしろ今日は春一番が吹くという暖かさだったので、串焼きにしておく。天然の鴨を使っていて、メニューには、散弾が入っていることがあるのでご注意とある。歯ごたえがあり、合鴨などとはまったく別物。酒も良いものを揃えている。「豊の秋」の大吟醸を四合瓶でいただいたが、これを六〇〇〇円で出すとは良心的である。
新著は『貧困連鎖』というタイトルで、ごらんの通りインパクトのある装丁に出来上がった。内容は、前著『新しい階級社会 新しい階級闘争』(光文社)を引き継いでいるが、今回はとくに、格差拡大を推進した政策の形成と、その背後で暗躍した人々について多くのページを割いた。酒税の逆進性(安い酒のほうが税率が高い)についても、言及しておいた。もう予約注文できるはずで、一九日あたりから書店に並ぶ予定。(2009.2.13)

豊島区池袋2−2−6
17:00〜23:00 日祝休

貧困連鎖 拡大する格差とアンダークラスの出現

貧困連鎖 拡大する格差とアンダークラスの出現