大道珠貴『東京居酒屋探訪』
著者は、一九六六年生まれの芥川賞作家。この人の小説は、まだ読んだことがない。『本』という講談社のPR誌があって、昨年一〇月号に拙著『階級社会──現代日本の格差を問う』の紹介を書いたのだが、たまたま同じ号に著者がこの本の紹介を書いており、興味を持ったので買ってみたというわけである。ただしこれは、決して居酒屋のガイドブックではなく、居酒屋論ですらなく、居酒屋を空間として借りたエッセイである。
この人、実によく酒を飲む。ふだんは、朝から飲んでいるという。もっとも、医者に止められて今はやめたようだが。多感で傷つきやすい心の持ち主で、ちょっとしたことで悩み苦しむ。その傷つきやすさ加減が独特で、私にはよく分からないのだが、同じような傷つきやすさを持つ人は、きっと涙が出るくらい共感するのではないかと思う。傷つきやすく、居酒屋にやすらぎを求める若い女性なら、読んでみるといい。でも、子持ち昆布のことを「ワカメを二枚のかずのこでサンドイッチした、ようかんみたいに見えるもの」などと書くのはやめよう(笑)。これがなぜ、講談社の優秀な校閲を通ったのか不思議だ。それとも、ほんとにそんな料理があるのだろうか。

- 作者: 大道珠貴
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/21
- メディア: 単行本
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