橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「三春駒」

classingkenji2009-02-18

二軒目に行ったのは、ここ。腰痛持ちの編集者は、板の間から脱してほっとしたようす。
地酒ブームが始まってまもない一九八〇年代半ば、池袋に全国の良心的な蔵元から良い酒を集めて売る酒屋があったことから、自然に池袋は地酒のメッカのようになっていた。酒の味を覚えた私は、そういう店にときどき通うようになったのだが、そのころよく行ったのが、この店。すっかりご無沙汰で、今日は三年ぶりくらいだと思うが、店長はちゃんと覚えてくれていた。
当時は、おそらく全国一品揃えの豊富な店だったと思う。名店として知られ、とても繁盛していた。今では、地酒を多数揃える店は珍しくなくなり、しかも料理に力を入れるなどプラスアルファの魅力を持つ店も増えたから、この店が特徴を失ったことは否めない。客の入りも、あまりよくないように思う。かつては日本酒がずらりと並んでいた冷蔵ケースの中身も、少しさびしくなった。それでも、水準を行く店であることに変わりはなく、とくに厳選されたお試しセット(超辛口、越後酒、大吟醸など、共通点のある三種類の試飲セット)は、酒の勉強になる。
池袋西口を出て、丸井の先から立教通りの左側に入り、少し進んだところの二階にある。(2009.2.13)

豊島区西池袋3-29-11 ファーストビル2F
17:00〜24:00 日休