「どっこい生きてる」(今井正監督・一九五一年)
一九五一年といえば、まだまだ戦後復興の途上で、貧しかった時代。職業安定所の紹介する仕事が日給二四〇円だったことから、ニコヨンと呼ばれるようになった日雇労働者が、必死に仕事を探してその日暮らしをしていた。この映画では、歌舞伎役者の河原崎長十郎が日雇労働者役。住む家がなくなり、しかたなく妻子を田舎へ行かせるため上野を訪れる。途中、アメ横を通るのだが、もうバラックではなく、ちゃんとした商店街の体裁を整えている。「やきとり 中華そば」とあるちょうちんの前で、「何か食わせてやりてえな」と足を止めるが、妻は金がないからいい、という。外の看板には、とんかつ、オムレツ、フライ、串カツ、各五〇円とある。
河原崎は、なんとか工場に就職が決まりかけるのだが、ドヤ住まいのその日暮らしだったので、給料日までの生活費がない。そこで仲間が少しずつ出し合って貸してくれた金が、四二三円。ところがこれを盗まれ、それがもとで一家心中しようかというところまで追い込まれてしまう。同じ一九五一年の映画「麦秋」(小津安二郎)では、北鎌倉のお屋敷に住む原節子が「ここのがいちばん美味しいのよ」と言って九〇〇円のケーキを食べていたから、ずいぶん格差がある。
今度、この映画のシーンを印刷して、アメ横へ行ってみたいと思っている。そういえば、アメ横ガード下の「やきとり文楽」がリニューアルして、メニューも増えたとか。行ってみないと。
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