橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「彩雲瑞」

classingkenji2008-12-10

一年半ほど前、近所にできた中華料理店。実は知る人ぞ知る実力店で、ある週刊誌のミシュランガイド批判記事で、載せるべき店のひとつとして取り上げられたことがある。店主は吉祥寺「竹爐山房」で十四年間修行を積んだとのこと。以前イタリアンだった場所をほとんどそのまま使い、要所に木を配し、中国風の書や紙を使ったランプを飾っただけの店内には、テーブル席が六つほど。気の張らない店である。
 これまでランチは何度か食べに行ったが、夜ははじめてなので、四七五〇円のコース料理を注文することにした。前菜からデザートまで、全一〇皿。盛りつけが良く、味も品良く和に通ずるものがある。いずれも美味しかったが、とくに下仁田ネギを揚げ煮にした前菜、干した豆腐を使ったスープ、もどしたスルメとピーマン、ズッキーニなど彩り野菜の炒め物、上海蟹を使ったスープで煮込んだ肉団子が印象に残った。量もほどよく、最後に出てきたえんどう豆ご飯さえ控えめにしておけば、中高年でも適量。酒はひと通りあるが、何種類かある紹興酒は、良く選び抜かれているようで、必ずしも紹興酒の好きでない私でも惹きつけられる。この日飲んだ七年ものの花彫は、すっきりした味で素晴らしかった。ビールは、キリンラガー。沿線の人なら、寄ってみる価値が十分ある。

さいうんすい
世田谷区経堂2-15-11 第2松原マンション1F
11:30〜14:00、17:30〜21:30(L.O.) 木休