橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「魚匠 銀平」

classingkenji2010-04-15

今日は臨時収入が入ったので、ちょっと高めの店にでも、ということで、ビールのあとは銀座の裏通りで店を物色する。初めはイタリアンかスパニッシュでも、と探していたのだが、良さそうな店はどこも満員。店員には「今度は予約していらっしゃってください」といわれる始末だ。客は、若者が多い。不況のこのご時世、使える金を持っているのは正社員の若者たちなのだろう。
仕方がないので、和食に方針転換して、入ってみたのがこの店。七丁目の花椿通りビルの五階にあり、ちょっと高級感のある店構え。手前にL字型カウンター、左にテーブル席が二つあり、奥には座敷。座敷には大きなガラス窓があり、七丁目のクラブ街を一望できる。テーブルは予約で埋まっているらしく、カウンター席に通された。
この店、本店は和歌山にあるらしい。大阪・北新地、神戸・三宮などに支店があり、東京はここ一軒だけ。満を持しての銀座進出ということか。この手の店は、家賃に金がかかるため、コストパフォーマンスは今ひとつということになりがちだが、この店は悪くなかった。夜のコースは七三五〇円と一〇五〇〇円だが、一品料理はかなり割高なので、コースを注文するのが良さそうだ。いずれのコースも、メインは鯛飯である。筍、山菜、ホタルイカなどの前菜、お造り、煮物、豆乳蕎麦、焼筍、天ぷらと平らげた頃にはほぼ満腹で、鯛飯を全部食べるのはとても無理。店員も心得ている。小さな椀に盛ってきて、残りはお持ち帰りなさいますか、という。もちろん、持ち帰ることにした。味は、かなりいい線を行っていて、とくに前菜と豆乳蕎麦がよかった。
難点は、メインの酒が「大関」であること。もう少しまともな酒を出せないものか。良い地酒も数種類あるが、一合一五七五円からと高すぎる。ビールだって、小瓶が八〇〇円である。料理のコストパフォーマンスとの落差が大きい。酒で利益を出すというやり方も理解できないではないが、酒飲みにはつらいものがある。(2010.4.10)

中央区銀座7丁目6-10
17:00〜23:00(ランチあり) 日祝休