橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

神楽坂ワヰン酒場

classingkenji2010-04-19

知人夫婦と食事の約束があって神楽坂へ行ったのだが、少し時間に余裕がある。坂とその周辺をしばらく物色し、見つけて入ったのがこの店。外壁をレンガで飾り、イミテーションながらよくできたブドウの蔓を這わせている。
売り物は、ワインのアウトレット品。ラベルが汚損したものを集めて安く提供するとのことで、この日の目玉は、「カレラ・ピノ・ノワール・セントラルコースト」、ボトルで六四三〇円、グラスで一一七〇円。ワイン漫画の名作『ソムリエ』で、主人公の天才ソムリエがロマネ・コンティと間違えそうになったというカリフォルニア・ワイン「カレラ・ジェンセン」の、下級品にあたるもの。もっとも詳しい人に聞いた話では、味の善し悪しはともかく、間違えるなどあり得ないくらい違うものらしいのだが、たしかに格安である。たまたま入手して家にストックがあるし、そもそも、これからレストランでワインをしこたま飲もうという予定だったので、ビールとスパークリングワインを一杯ずつにとどめておく。
ビールはヱビスで、ピルスナーグラスが三九〇円、スパークリングは南アフリカ産のソーヴィニョン・ブランを使ったという珍しいもので、四二〇円。料理もいろいろあり、概して安い。五時過ぎだというのに、若者で満員になるわけである。今後は、ゆっくり飲みに来ることとしよう。(2010.3.20)

新宿区神楽坂4-2-1 嶋田ビルB1・1F
17:00〜24:00(金・祝前〜27:00 日祝〜23:00)