橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

阿佐ヶ谷「まにわ」

classingkenji2008-05-27

今日は、テレビ東京のHさん、ライター・紀行家のYさんと待ち合わせ。Hさんのお勧めのこの店は、阿佐ヶ谷の北口を出て飲食店街を抜け、少し歩いた住宅地にある。店主の間庭順子さんは元OLで、勤めを辞めた後いくつかの店で修行して、この店を開いたとのこと。L字型カウンター六席だけの小さな店である。一品料理もいろいろあるが、メインは酒を主役にすることを前提にした三〇〇〇円のコース料理で、これに日本酒をいろいろ組み合わせるというのが基本。酒は、賀茂金秀、遊穂、東北泉など、選りすぐりの十数種類。今日の料理は、前菜の盛り合わせ(筍の茶碗蒸し、鰺寿司、のれそれ)、お造り、とうもろこしの薩摩揚げ、だし巻き卵、そして選べるメイン料理などと続く。料理はていねいに作られたもので、たいへんおいしい。酒も、よく勉強されているようで、通り一遍のものではないメニュー構成。間庭さんの物腰柔らかな客対応もいい。コースに酒三種類、それに最初の生ビールで六〇〇〇円ほど。近くに住んでいたら、月二、三回くらいは通ってしまいそうだ。阿佐ヶ谷は杉並区最大の商店街を擁する土地だが、駅から二、三分も歩くと落ち着いた住宅地が現れる。しかも、すぐ近くにはこんなおいしい店がいくつもある。こんな場所に住める人がちょっとうらやましい。狭い店なので、予約は必須である。(2008.5.15)

杉並区阿佐谷北2-10-11
18:00〜23:30 日・第1・3月休
03-6421-3456