橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

三軒茶屋「戎参」

classingkenji2008-05-29

一仕事終えたので、運動不足の解消も兼ね、自宅から三軒茶屋まで歩く。距離は、五キロほどだろうか。一時間少々で到着する。まず向かったのは「久仁」だったが、五時半頃だったので、すでに満員。そこで新しい店でも開拓しようかと、例の世田谷通りと玉川通りに挟まれた三角地帯へ。ここはヤミ市起源の商店街と飲食店街のあるところで、縦横に行きかう路地には、それぞれ仲見世商店街、三茶小路飲食店街、ゆうらく通りなどの名前が付く。仲見世商店街を通りかかると、できたばかりのような新しい店の前に「もつ焼」「樽生ホッピー」の文字が。これは、入らないわけにはいかない。店の名前は「戎参」。もともと、三軒茶屋のはずれと三宿に「えびすさん」というもつ焼き屋があるのだが、その三号店という意味のようである。写真のように、「戎精肉店」と書かれた古びた看板があり、精肉店が業態転換してもつ焼き屋を始めたのかと思わせるが、実はこれは演出。空き店舗のままだった物件を再生し、しかもこの古い商店街と共生していけるようにするための工夫だという。ホッピーの箱を積んでベニヤ板を載せたテーブルなど、ある意味ではわざとらしいのだが、この立地を考えたうえでのことで、けっこう自然な感じがする。
生樽ホッピーは、うれしいことに白と黒の二種類がある。どちらも四二〇円で、味は及第点。他に酎ハイ三〇〇円、生レモンサワー四〇〇円など。串焼きは基本が一三〇円で、ツクネ、テッポウは一五〇円。串焼きはガスを使っているようで、やや焼き上がりがすっきりせず、まあまあという程度。しかしこの手の新しい店は、店員が経験を積むとともにだんだん味がよくなっていくこともあるので、今後に期待。他に、レバ、ガツ、タン、コブクロの刺身(四〇〇円−四五〇円)がある。ともかく、比較的近所で生ホッピーが飲めるというのはうれしい。この商店街も、再開発の計画があるらしいが、元気な居酒屋がいくつかできて、この雰囲気を残したまま活性化することに期待したい。なお、この店のなりたちとコンセプトについては、こちらを参照。(2008.5.21)

世田谷区三軒茶屋2-13-17 
16:00〜23:00 無休