橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「新宿ライオン会館」

classingkenji2010-09-16

新宿の三越裏にある「ライオン会館」は一九三九年創業。現存するライオンでは、おそらく一九三四年に建てられた銀座七丁目店に次いで古く、規模も地下一階から七階までと大きい。新宿が繁華街として急成長をとげていた時期に進出を果たしたということだろう。業態も多様で、地下と一階がビヤホール(ただし、メニューは微妙に異なる)、二階がダブリナーズ・アイリッシュ・パブ、三階がピザ・レストラン、四階がアジア料理、五階が和食、六・七階がパーティー会場である。今日は、五階の和食に初めて行ってみた。
一般に居酒屋というのは和食中心なので、この種の和食の店はどうしても老舗居酒屋との勝負となり、味の上でも価格の上でも、あまり感心しないことが多い。長崎料理を売り物にしたメニューは、けっこう工夫されており、長崎牛たたき、薩摩揚げなど悪くはないが、老舗居酒屋との比較では分が悪い。やはり、あくまでも美味いビールがメインである。
しかし、ちょっと気を引かれたのがこの日本酒メニュー。店によってはかなり金を取る、この有名地酒の吟醸本醸造クラス四種類が一杯五〇〇円なら、安いといえる。最近は次の日に応えるので控えているが、以前はビールをチェイサーに日本酒を飲むというのが、私のじっくり飲みのパターンだった。このパターンを復活させたくもなる。ビールの味は、銀座に劣らない。(2010.8.15)

新宿区新宿3-28-9
11:30〜 無休